令和6年度から、児童相談所長の判断で一時保護を行う場合に、まず保護して7日以内に裁判所に対して保護状の発行を求める手続きが始まる。これにより国連から再三指摘されてきた一時保護実施に当たっての司法審査導入が実現することになるのか?司法導入にマニュアルが上がってきたので読んでみると、これまで同様に児童相談所長の判断が優先され、虐待を受けた恐れ、虐待を受ける恐れでも保護ができることとなり、結局、「説明はできません、所の決定です」がこれまで通りまかり通る恐れが高まった。
国連から再三指摘を受けてきた内容は以下のとおり。日本の第 7 回定期報告書に対する最終見解 2022/11/03
- 締約国は、以下を行うべきである。
(b) 子どもを家族から引き離す明確な基準を設け、それが正当かどうかを判断するために、すべてのケースに強制的な司法審査を導入し、最後の手段としてのみ、子どもおよび親の意見を聞いた上で、子どもの保護と子どもの最善の利益のために必要な場合外は、親から引き離されないことを保証するよう法律を改正しろ。
47.締約国は、2025 年 11 月 4 日までに、上記第 7 項(国内人権機関)、第 33 項(難民及び亡命希望者を含む外国人の待遇)及び第 45項(子どもの権利)において委員会が行った勧告の実施に関する情報を提供するよう要請される。
48.締約国(日本)は報告書の提出に先立って 2028 年に委員会の問題リストを受け取り、1 年以内に第 8 回定期報告書を構成する回答を提出すること。報告書の作成にあたり、締約国に対し、同国で活動する市民社会および非政府組織と広く協議するよう要請する。
一方で、子ども家庭庁作成のマニュアルは以下の通り。
「児童虐待を受けた」場合のみならず、「児童虐待を受けたおそれ」がある場合についても、迅速に児童の安 全を確保し、又は調査等を行うことにより、児童虐待の有無及び援助方針の検討等を行う必要性が高いことから、一時保護の対象とした。さらに、児童虐待という重大な人権侵害から児童を守るには、被害が生じてからではなく、予防的観点から早期対応を行うことが肝要であることから、「児童虐待を受けるおそれ」がある場合についても、一時保護の対象とした。
結局手法だけが書かれていて、国連が指摘してきた民主国家における子供の人権尊重の視点、「親から引き離されないことを保証するよう法律を改正しろ。一時保護は最後の手段としてのみ、子どもの保護と子どもの最善の利益のために必要な場合外は引き離してはならない・・・」こうした原理原則、理念を全く記載しない手続き論は、大方誤った報告に組織を導くこととなる。